「実は、GRAND KIRINのプロジェクトに対しては、製品そのものはもちろん、プロモーションも含めて『すべて新しいことにチャレンジする』というのがテーマでした。そのため、新しいビールのカテゴリーを引っ張っていく思いで商品を企画しましたし、プロモーションも新しいビジネスモデルを作るくらいの意気込みで取り組みました。その結果、生まれたのが、『BEER to friends』というキャンペーンでした。」
ソーシャルメディアとリアル店舗の融合がもたらしたもの
GRAND KIRINのキャンペーン「BEER to friends」は、簡単にいうと、Facebookの友達やTwitterのフォロワーに、GRAND KIRINをギフトとして贈ることのできるキャンペーンである。
「またこれは当初、まったく想定していなかったのですが、ブランドとしてお客さまと非常にいい出会い方ができたと感じています。というのも、最初の接点として『BEER to friends』で贈ったり贈られたりという特別な体験がベースにあり、単純に店頭で買ったり、懸賞サイトで当たったりしたのとは異なり、『誰々さんからもらったビール』『誰々さんに贈ったビール』という関係性ができていたのです。同じビールに出会うのでも、量販店の店頭よりも、たとえばロンドンのパブで出会った方が印象はよいでしょう。それと似たことが、GRNAD KIRINでは少し起きたのではないかと思っています。」
「パーソナルギフト」の持つパワー
この「BEER to friends」を支えたSBギフトの「ポチッとギフト」の役割について、山口氏は次のように評価する。
「確実にいえることは、SBギフトさんのサービスがなかったら、『BEER to friends』は実現できなかったということです。電子的にギフトを送って店頭で引き換えるという仕組みは、我々だけでは到底構築できません。セブン-イレブンさんの全国の店舗数と店頭でのオペレーションにによって実現できた販売促進と言えます。新しい価値の商品を、まさに新しい仕組みによって広げることができました。」
「BEER to friends」キャンペーンは、キリン社内でも高く評価されている。実際にGRNAD KIRINは、商品やマーケティング施策を含めて「キリンビール大賞」という賞(社長賞)を受賞している。また、2012年度のグッドデザイン賞を受賞し、広告関連のメディアでも取り上げられた。こうした中、山口氏は、次なる展開について抱負を語る。
「まだ何も決まっていないので、私の空想ということになりますが、グループ会社を見渡せば、付加価値の高い商品がまだまだたくさんあります。まずはこうした商品に対して『BEER to friends』のような施策を横展開することは可能だと思います。また、飲食店と直接つながって、時間をプレゼントするような施策もできたら面白いですね。」
「日本人の国民性もあると思うのですが、個人的にFacebookで『BEER to friends』を使ってGRNAD KIRINを大勢の人に贈っていると、だれに贈っているのか、どのぐらい贈っているのかが見られていそうで、それがちょっと気になりました。私自身、このキャンペーンで贈りまくっていましたからね(笑)。一方、Twitterは匿名性が高いので、もっと気軽に贈れる気がします。その意味では、Facebookは、我々が当初考えていた以上にオフィシャルなメディアになりつつあるのかもしれません。