
アンケートの回答率を上げるインセンティブ活用術 効果的な種類・相場・設計ポイントを解説
アンケート調査を実施しても、思うように回答が集まらない——。そんな課題を抱える企業担当者は少なくありません。実際、Webアンケートの平均回答率は10〜30%程度にとどまり、十分なサンプル数を確保するのは容易ではありません。
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こうした状況を打開する鍵となるのが「インセンティブ」の活用です。適切なインセンティブを設計することで、回答率の向上だけでなく、回答の質の改善や回収スピードの短縮も期待できます。
本記事では、アンケートインセンティブの基礎知識から、種類別の特徴、ターゲット別の選び方、相場感、そして失敗しないための注意点まで、企業のマーケティング担当者やリサーチ担当者が知っておくべき情報を網羅的に解説します。
なぜアンケートにインセンティブが必要なのか
アンケート回答率が伸び悩む理由
アンケート調査における回答率の低さは、多くの企業が直面している共通の課題です。一般的なWebアンケートの平均回答率は10〜30%程度とされており、特に企業から消費者に向けた「BtoC型」のアンケートでは、さらに低い傾向が見られます。
回答率が低くなる主な理由として、次のような要因が挙げられます。まず、アンケートそのものが長すぎる、あるいは質問数が多すぎることで、回答者が途中で離脱してしまうケースです。また、質問内容が専門用語ばかりで分かりにくかったり、そもそもなぜこのアンケートに答える必要があるのかが不明確だったりすると、回答意欲は大きく低下します。さらに、自由記述形式の質問が多い、個人情報の入力を求められるといった回答者への負担が大きい設計も、回答率低下の一因となります。
これらの要因により、回答者はアンケートに回答する動機を見出せず、途中で離脱したり、そもそも回答を開始しなかったりするケースが多発します。統計的に信頼性の高いデータを得るためには、一定以上の回答数が不可欠です。回答率が低いと、特定の層に偏った回答のみが集まり、母集団全体を正確に反映したデータを得ることが難しくなります。
インセンティブが回答率・回収スピードに与える効果
インセンティブとは、アンケート回答者への謝礼やプレゼントのことです。適切なインセンティブの提供は、アンケート調査の成功率を大きく左右する重要な要素となります。
インセンティブがもたらす効果は多岐にわたります。まず第一に、回答率の大幅な向上が期待できます。回答者が「得をする」という感覚を持つことで、参加意欲が高まるためです。特に金銭的インセンティブであるポイント、現金、ギフトカードは、幅広い層に効果的であることが複数の調査で確認されています。
次に、回収スピードの短縮も見込めます。即時でインセンティブを受け取れる仕組み、たとえばデジタルギフトなどを導入することで、回答者の行動を促し、短期間で必要なサンプル数を確保できるようになります。さらに、適切なインセンティブ設計により、真剣に回答してくれる回答者を集めやすくなり、回答の質の向上にもつながります。
加えて、謝礼を受け取ることで回答者は「協力してよかった」と感じ、企業への好感度が高まる効果も期待できます。実際、アンケート調査の回収率向上において、インセンティブの効果的活用は最も多くの回答者に効果をもたらす施策として認識されています。ただし、インセンティブの種類や金額設定を誤ると、期待した効果が得られないだけでなく、不正回答を招くリスクもあるため、戦略的な設計が求められます。
代表的なアンケートインセンティブの種類と特徴
アンケートインセンティブは、大きく「金銭的インセンティブ」と「非金銭的インセンティブ」の2つに分類されます。ここでは、実務でよく活用される代表的なインセンティブの種類とその特徴を解説します。

ギフトカード(金券系インセンティブ)
ギフトカードや金券は、アンケートインセンティブの中でも最も汎用性が高く、幅広い層に受け入れられやすい選択肢です。現金、QUOカード、図書カード、Amazonギフトカード、各種商業施設のギフトカードなどが該当します。
ギフトカード系インセンティブは、その汎用性の高さから多くのアンケート調査で採用されています。特に全員プレゼント型として提供することで、回答率の大幅な向上が期待できます。
ノベルティグッズ
ノベルティグッズは、非金銭的インセンティブの代表例です。企業のオリジナルグッズや実用的なアイテムを提供することで、ブランド認知の向上と回答促進の両方を実現できます。文房具、エコバッグ、タンブラー、モバイルバッテリー、限定品などが該当します。
ポイント・マイレージ付与
既存の会員制度やポイントプログラムと連携したインセンティブです。自社ポイント、共通ポイント(楽天、Tポイント、Pontaなど)、航空マイレージ、電子マネーなどの形で提供されます。
ポイント・マイレージ付与は、既存顧客との関係強化に特に有効です。「アンケートに答えて○○ポイントプレゼント」という形式は、会員向け施策として広く定着しています。ただし、新規顧客開拓には向かない点に注意が必要です。
デジタルギフト
デジタルギフトは、近年急速に普及しているインセンティブ形式です。メールやSMS、アプリを通じてURLやコードを送信し、受取人がオンラインで商品やサービスを選択・利用できる仕組みです。デジタルギフトコード、電子マネー、オンラインクーポン、サブスクリプションサービスの無料体験などが該当します。
デジタルギフトは、特にオンラインアンケートとの相性が良く、「アンケート回答→即座にギフトコード送信」という一気通貫の体験を提供できます。SBギフトが提供する「ポチッとギフト」などのサービスを活用すれば、アンケートツールとの連携も容易で、運用負担を大幅に削減できます。
ターゲット別 アンケートインセンティブの選び方
効果的なインセンティブは、ターゲット層によって異なります。BtoC向けとBtoB向けでは、回答者の動機やニーズが大きく異なるため、それぞれに適したインセンティブ設計が必要です。
BtoC向けアンケートの場合
一般消費者を対象とするBtoC向けアンケートでは、回答率が低くなりやすい傾向があります。消費者は企業のアンケートに回答する明確な動機を持たないため、「答えるメリット」を分かりやすく提示することが重要です。
BtoC向けインセンティブで重視すべきは、第一に金銭的価値が明確であることです。現金、ギフトカード、ポイント、電子マネーなど、金額が明示されたインセンティブが効果的で、「500円分のAmazonギフトカード」のように具体的に提示しましょう。第二に、抽選式よりも全員プレゼント型が回答率向上に大きく寄与します。「確実に謝礼を受け取れる」という安心感が、回答行動を促すのです。
また、ターゲットが広範囲にわたる場合は、年齢・性別・趣味を問わず使えるギフトカードやポイントが無難です。さらに、デジタルギフトのように回答後すぐに謝礼を受け取れる即時性を重視した仕組みは、回答完了率を高めます。
BtoC向けアンケートでは、「少額でも確実にもらえる」ことが重要です。300円程度のインセンティブでも、全員配布型であれば十分な効果が期待できます。
BtoB向けアンケートの場合
企業や法人担当者を対象とするBtoB向けアンケートでは、BtoCとは異なるアプローチが求められます。ビジネスパーソンは時間的制約が厳しいため、回答に要する時間に見合った価値提供が必要です。
BtoB向けの特徴として、まず中価格帯が中心となります。法人向けアンケートでは、500円〜1,000円程度のインセンティブが人気です。回答時間が10分を超える場合は、1,000円以上を検討しましょう。また、経営層や高所得層に対しては、金銭的インセンティブよりも「慈善団体への寄付」や「社会貢献プログラムへの参加権」といった社会貢献型の選択肢が効果的な場合があります。
さらに、ビジネス書籍の購入に使えるギフトカードやオンライン学習サービスのクーポンなど、業務に役立つインセンティブも喜ばれます。BtoB調査でもデジタルギフトの活用が増加しており、メールで受け取れる手軽さと即時性が評価されています。
BtoB向けアンケートでは、回答者の時間的価値を認識し、それに見合ったインセンティブを設定することが重要です。また、企業によっては社員が外部から金品を受け取ることに制約がある場合もあるため、事前確認や複数の選択肢の用意が望ましいでしょう。
アンケートインセンティブの相場感
インセンティブの金額設定は、アンケートの回答率に直結する重要な要素です。適切な相場を理解し、調査方法や所要時間に応じた金額を設定しましょう。
以下は、アンケート調査の方法別にみたインセンティブの相場です。
インセンティブの金額を決定する際は、次の3つの要素を総合的に考慮します。まず回答所要時間で、基本的に回答に要する時間が長いほど高額のインセンティブが必要です。目安として、10分あたり300〜500円程度を基準に考えるとよいでしょう。次に回答の負担度で、自由記述が多い、専門的な知識が必要、個人情報の入力が求められるなど、回答負担が大きい場合は所要時間以上のインセンティブを検討します。そしてターゲット層の特性で、一般消費者なら100〜500円程度でも効果がありますが、専門職・高所得層には1,000円以上、法人担当者には500〜1,000円が中心となります。
限られた予算の中で最大の効果を得るには、全員配布型と抽選型を組み合わせる方法も有効です。たとえば低予算(総予算3万円、目標回答数300件)なら、全員に50円分のデジタルギフト、抽選で10名に3,000円分のギフトカードという設計が考えられます。中予算(総予算15万円、目標回答数300件)なら全員に300円分のデジタルギフト、抽選で10名に3,000円分のギフトカード、高予算(総予算30万円、目標回答数300件)なら全員に1,000円分のギフトカードといった設計が可能です。
予算に余裕がある場合は、全員配布型の方が回答率向上効果は高くなります。一方、予算が限られている場合でも、少額の全員配布と高額の抽選を組み合わせることで、「確実性」と「期待感」の両方を提供できます。
アンケートインセンティブで失敗しないための注意点

インセンティブは回答率向上に有効ですが、適切に設計しないと、不正回答の増加やコンプライアンス違反といったリスクを招く可能性があります。ここでは、失敗しないための注意点を解説します。
インセンティブ目当ての回答を防ぐ工夫
インセンティブを用意すると、謝礼だけが目的で、真剣に回答しない「不正回答」や「適当な回答」が増えるリスクがあります。以下の対策を講じることで、回答の質を維持できます。
整合性チェック機能の活用が第一の対策です。対となる質問を複数設置し、回答の整合性を検証する方法で、たとえば「あなたは週に何回外食しますか?」に「週5回以上」と答え、「あなたは普段、自炊と外食のどちらが多いですか?」に「自炊が多い」と答えるような矛盾する回答をした場合、不正回答の可能性があると判断できます。
次に重複回答の防止です。同一人物が複数回回答してインセンティブを不正取得することを防ぐため、シリアルコード認証(事前に配布したコードを入力させる)、メールアドレス認証(回答者のメールアドレスに認証リンクを送信)、IPアドレス・デバイスID制限(同一端末からの複数回答を制限)、会員IDとの紐付け(既存会員システムと連携)などの対策が有効です。特にデジタルギフトを活用する場合、シリアルコード認証機能付きのアンケートシステムを導入することで、運用負担を抑えつつ不正を防止できます。
アンケート設問の改善も重要です。質問が多すぎる場合は重要な質問に絞り込み(10〜15問程度)、自由記述が多い場合は選択式を中心にして自由記述は最小限に、誘導的な質問は中立的な表現を使用、専門用語の多用は平易な言葉に置き換えるといった改善が必要です。
また、回答時間の監視も効果的です。極端に短い時間で回答を完了している場合、適当に回答している可能性があります。アンケートシステムによっては、回答時間を記録・分析できる機能があるため、活用しましょう。
さらに、全員配布型ではなく抽選式との併用も一案です。「確実にもらえる」わけではないため、不正回答のモチベーションを下げる効果があります。ただし、抽選式にすると回答率そのものが下がる可能性もあるため、バランスが重要です。
景品表示法(景表法)への対応も欠かせません。景表法は、消費者の適正な商品選択を妨げる不当な表示や過大な景品提供を規制する法律です。アンケートの謝礼は、基本的には「取引に付随しない」ため景表法の対象外ですが、商品購入者のみを対象としたアンケート、来店者を対象としたアンケート、会員登録を条件としたアンケートなどのケースでは、アンケートが「顧客を誘引する手段」と見なされ、景品規制の対象となる可能性があります。
総付景品(購入者全員に提供する景品)の場合、取引価額が1,000円未満なら景品類の限度額は200円、1,000円以上なら取引価額の20%という上限が定められています。消費者庁の見解によると、「商品・サービスの購入者に対し、購入額の多少にかかわらず景品類を提供する場合の取引の価額は、原則として100円」とされており、この場合、景品の上限額は200円となります。
景表法違反を避けるためには、対象者を明確にすること(「購入者限定」「来店者限定」といった条件付きアンケートの場合は景表法を意識した設計が必要)、金額を適切に設定すること(上限額を超えないよう事前に確認)、表示を正確にすること(「必ずもらえる」「全員プレゼント」などの表示は確実に履行できる場合のみ使用)、そして不安がある場合は専門家に相談することが重要です。
なお、純粋な市場調査やCS調査として実施され、商品購入や来店を条件としないアンケートであれば、通常は景表法の適用を受けません。






