
新規獲得より重要!リテンションマーケティングの基本と成功の秘訣
人口減少に伴い、新規顧客獲得の難易度が年々上昇する中、企業にとって既存顧客との関係維持がビジネス成長の鍵となっています。新規顧客を獲得するコストは既存顧客の維持コストの5倍かかるとされる中、リテンションマーケティングという手法が注目を集めています。
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リテンションマーケティングとは
リテンションマーケティングは、新規顧客の獲得よりも既存顧客との関係構築を重視するマーケティング手法です。顧客の継続利用やリピート購入を促し、長期的な関係構築を目指します。
顧客リテンションと従業員リテンションの違い
リテンション(retention)は「維持」「保持」を意味する英語で、ビジネスにおいては大きく2つの分野で使用されています。人事分野でのリテンションは「人材の確保」や「離職を防ぎ、継続的に活躍してもらうための施策」を指し、「リテンションマネジメント」「リテンション戦略」とも呼ばれます。一方、マーケティング分野でのリテンションは顧客維持のことを指し、顧客との関係を維持すると同時に、ロイヤリティを高め優良顧客へと成長させるためのマーケティング活動を意味します。
マーケティング文脈で使われる「リテンション」の意味
マーケティング文脈におけるリテンションとは、既存顧客のリピート化や長期契約など、顧客と継続的な関係を築くことを目的としたマーケティング施策です。具体的には、既存顧客への新商品案内メールやポイントサービス、ロイヤルティプログラムやアプリの起動を促すプッシュ通知など、既存顧客に接触し、商品の再購入やより積極的なサービス利用を促す施策を指します。顧客へのリピート促進施策や、顧客満足度を高める施策などを活用することで優良顧客を育成し、会社の安定的な発展を実現するマーケティング手法となっています。
リテンションの重要性
リテンションマーケティングは企業成長において、新規顧客獲得よりも高い効果が期待できる戦略として重要視されています。費用対効果の観点から、その価値を理解することが重要です。
新規顧客獲得よりリテンションが効果的な理由
新規顧客に販売するコストは既存顧客に販売するコストの5倍かかるという「1:5の法則」が示すように、リテンション施策は新規獲得よりも圧倒的にコスト効率が良いとされています。この法則は、アメリカのコンサルタント会社ベイン・アンド・カンパニーのフェローであるフレデリック・F・ライヘルドが提唱したもので、現代のマーケティング戦略における重要な一部となっています。新規顧客の獲得には、広告費、セールス活動費、キャンペーン費用、SEO対策費用などが含まれ、顧客を教育し信頼を得るまでに時間とコストがかかります。一方、既存顧客はすでに商品やサービスの良さを理解しているため、商品説明や教育コストが不要で、リピート購入やクロスセル、アップセルが容易になり、販売コストが大幅に削減されます。さらに顧客離れを5%改善すれば、利益が最低でも25%改善されるという「5:25の法則」も存在し、既存顧客維持の重要性を裏付けています。
リテンションを高めるための基本戦略
効果的なリテンション戦略を実行するためには、顧客とのコミュニケーション強化とインセンティブ設計が重要な要素となります。これらの戦略を適切に組み合わせることで、顧客満足度と継続率の向上を実現できます。
効果的な顧客コミュニケーションの方法
リテンション向上には、顧客の購入履歴や行動データに基づいたパーソナライズされたコミュニケーションが効果的です。メールマーケティングでは、過去の購入履歴に基づいたレコメンデーション機能を活用し、顧客の関心を継続的に引きつけることができます。LINE公式アカウントやSNSを利用した定期的な情報発信も重要で、新商品情報や特典情報の配信により、ECサイトへの再訪問を促進できます。また、購入後のフォローアップとして、感謝を伝えるメールの送信や、購入した商品の使い方を分かりやすく説明する動画の提供により、顧客満足度を高めることが可能です。さらに、AIチャットボットの導入により、問い合わせに対して時間帯を問わず素早い対応が可能になり、顧客満足度の向上につながります。
デジタルギフトによるインセンティブ設計
eギフトマーケティングは、顧客同士の「贈る・もらう」というコミュニケーションの中に自社商品を介在させ、新たなビジネスチャンスを創出する戦略として注目されています。デジタルギフトの導入により、これまでリーチできていなかったギフト需要を獲得し、新たな収益の柱を確立できます。特に、eギフトの受け取りで来店した顧客による「ついで買い」は客単価を向上させる絶好の機会となり、商圏の壁を越え、新規顧客に来店してもらう効果も期待できます。実際の成功事例として、「Soup Stock Tokyo」はeギフト導入後、EC売上全体の25%をeギフトが占めるまでに成長し、eギフト購入者の約70%がオンラインストアでの購入が初めての新規顧客となっています。また、コスメブランド「ポール & ジョー」では、eギフトの売上がわずか半年で780%という驚異的な成長を遂げ、eギフトを受け取った人の25%が新たにメールマガジンに登録するなど、新規顧客との重要な接点創出にも成功しています。
成功事例から学ぶリテンション施策
実際の企業における成功事例を分析することで、効果的なリテンション施策の具体的な手法と成果を理解できます。業界別の特性を活かした施策展開が重要です。
サブスクサービスの解約抑止施策
解約の理由には、思っていたより見たいものがなかった、広告ほど効果がなかったというものが上位にあがり、半分以上の人がサービスの全容を知らないまま解約しようとしたり、飲み方や使用方法を勘違いして正しい効果がでない人がいることが分析により判明しています。効果的な解約抑止策として、「知らないこと、勘違いは教えてあげる」アプローチが有効です。ある通販業社で、商品が余るという解約理由が1位の企業において、解約時の理由に商品が余っていると答えた人に、配送時期を変更できるページの存在を教えると約25%の人が解約を踏みとどまり、配送時期の変更を選んでくれたという実例があります。また、株式会社アイアットOECは、予測分析ツール「Prediction One」を導入し、CS活動において7割程度の顧客が維持または改善し、分析にかかっていた時間はおよそ10%ほどの削減を実現しています。解約防止では現状把握から目標設定、解約予測、施策実行のステップを踏むことが重要で、解約しそうなユーザーをピンポイントで特定し、適切なフォローアップを実施することが成功の鍵となっています。
ECサイトにおける再購入促進
ECサイトでは、リピーターによる購入額が全体の売上の約50%~70%を占めることも少なくなく、リピーターによる購入は売上基盤の安定化に大きく影響しています。効果的な再購入促進策として、ポイントプログラムの導入が挙げられ、購入額に応じてポイントを付与し、次回購入時に割引として利用できる仕組みが広く活用されています。パーソナライズされたリマーケティング施策では、既存顧客の購入履歴や閲覧履歴を活用して、最適化した広告やメールを配信することで再訪問を促進します。特別感を与える施策として、会員情報の生年月日を参照した誕生日割引の提供や、会員登録記念日の特別割引などが効果的です。最新トレンドとして、サブスクリプションモデルの導入により定期的なリピート購入を獲得する手法や、LINEやチャットボットを使ったリアルタイムでの顧客サポートにより顧客満足度を高める施策が注目されています。購入後のフォローでは、感謝メールの送信や商品使用方法の動画提供に加え、「この商品を購入した人はこんな商品も購入しています」といったレコメンド施策を組み合わせることで、ECサイトへの再訪問率を高めることが可能です。